外れる理由は
2つあります
「美容医療にはクーリング・オフがある」は本当です。ただし対象になる施術は、省令で5つだけに絞られています。
ここは「取り消せるかどうか」を条文で確定させるページです。 取り消せないことが分かったら、次に何が使えるのかまで置きます。 費用の話は料金の注意点、すでに高額になっている場合は高額請求されたときをご覧ください。
省令が定めている5つ
特定商取引法の「特定継続的役務提供」のうち、美容医療は政令(施行令 別表第四 二の項)にこう書かれています。
人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、体重を減じ、又は歯牙を漂白するための医学的処置、手術及びその他の治療を行うこと (美容を目的とするものであつて、主務省令で定める方法によるものに限る。)
★この政令には、施術の名前が1つも書かれていません。 「主務省令で定める方法によるものに限る」と、別の省令に投げています。 その省令が特定商取引に関する法律施行規則 第91条で、ここに5つだけが並んでいます。
施行規則第91条が定める5つの方法
| # | 施術 | 省令が定める方法 |
|---|---|---|
| 一 | 脱毛 | 光の照射又は針を通じて電気を流すことによる方法 |
| 二 | にきび、しみ、そばかす、ほくろ、入れ墨その他の皮膚に付着しているものの除去又は皮膚の活性化 | 光若しくは音波の照射、薬剤の使用又は機器を用いた刺激による方法 |
| 三 | 皮膚のしわ又はたるみの症状の軽減 | 薬剤の使用又は糸の挿入による方法 |
| 四 | 脂肪の減少 | 光若しくは音波の照射、薬剤の使用又は機器を用いた刺激による方法 |
| 五 | 歯牙の漂白 | 歯牙の漂白剤の塗布による方法 |
出典:特定商取引に関する法律施行規則 第91条(e-Gov法令検索)。条文の文言のまま引用しています。
外れる理由は2つ
対象になるには施術の種類・期間・金額の3つを満たす必要があります。
3つの条件と、1回で終わる手術の場合
| 条件 | 内容 | 1回で終わる手術は |
|---|---|---|
| 施術の種類 | 施行規則第91条の5つ(上の表) | 列挙の中に語が見つかりません |
| 期間 | 1月を超えるもの(施行令 別表第四 第二欄) | 満たしません |
| 金額 | 5万円を超えるもの(施行令 第24条) | 満たすことが多いです |
出典:特定商取引に関する法律施行令 別表第四・第24条、同施行規則 第91条(e-Gov法令検索)。3つはすべて満たす必要があります。1つでも外れると特定継続的役務提供にはなりません。
★期間だけの話ではありません。 よく言われるのは「1回で終わるから期間を満たさない」ですが、施術の種類の側でも外れます。 2つの別々の理由で外れている、というのが条文の形です。
保険が使える状態なら、そもそも美容ではない
政令の条文には、もう1つ条件が付いています。「美容を目的とするものであつて」です。 消費者庁のQ&Aはこう書いています。
傷病からの回復等を目的とするものであると認められる場合は、美容を目的とするものには該当しません
つまり保険が使える状態の治療は、美容医療の枠に入りません。 保険が使えるかどうかの線引きは医師の判断ですが、制度の形としては 「保険の治療なら美容医療ではない/自由診療なら美容医療の枠に入りうるが、省令の5つに入っていない」という二段になります。
同じQ&Aは、逆向きの例も挙げています。
手術後一定期間が経過し、社会通念に照らして患者の健康状態が回復したと判断される場合において、 傷跡の見た目が気に入らないといった理由で新たに治療を受けたときには、当該治療は「美容を目的とするもの」として、 ここでいう美容医療に該当し得るものと考えられます
対象になる場合の、中途解約の上限額
もし対象になる契約だった場合、8日を過ぎた後でも「中途解約」ができます(特定商取引法 第49条)。 理由は要りません。将来に向かって解除する形です。 そのときに事業者が請求できる額には政令で上限があります。
美容医療の中途解約で、事業者が請求できる上限
| いつ解約するか | 上限額 |
|---|---|
| 施術が始まる前 | 2万円(契約の締結及び履行のために通常要する費用の額) |
| 施術が始まった後 | 提供された役務の対価+5万円または契約残額の20%のいずれか低い額 |
出典:特定商取引に関する法律 第49条、同施行令 別表第四 二の項 第三欄・第四欄(e-Gov法令検索)。ほかに法定利率の遅延損害金が加わります。エステティックの場合は2万円または契約残額の10%のいずれか低い額です。
★これは「対象になる場合」の数字です。 上の表で施術の種類の条件を満たしていなければ、この上限は使えません。 それでも知っておく意味があります。クリニックが「解約は一切できません」と言った場合、 それがどの制度に基づく説明なのかを聞き返せます。
8日以内のクーリング・オフ(第48条)は、法定の契約書面を受け取った日から起算します。 書面が交付されていなければ、起算が始まりません。
ローンを組んだなら、別の条文があります
医療ローン(クレジット)で支払う契約をした場合、特定商取引法とは別の法律が使えることがあります。 割賦販売法 第30条の4です。
購入者又は役務の提供を受ける者は、……当該役務の提供につきそれを提供する包括信用購入あつせん関係役務提供事業者に対して生じている事由をもつて、 当該支払の請求をする包括信用購入あつせん業者に対抗することができる
支払停止の抗弁(割賦販売法 第30条の4)
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 第1項 | クリニックに対して生じている事由を、ローン会社の支払請求に対して主張できる |
| 第2項 | これに反する特約で、消費者に不利なものは無効 |
| 第3項 | ローン会社から事由を記載した書面の提出を求められたら、提出するよう努める |
| 第4項 | 支払総額が4万円に満たない場合は適用しない(施行令 第21条) |
出典:割賦販売法 第30条の4、同施行令 第21条(e-Gov法令検索)。これは支払を止める主張ができるという規定で、契約が無かったことになる規定ではありません。主張が認められるかどうかは事実関係によります。
自由診療に明細書を出す義務はありません
「総額がいくらになったのか分からない」という状態を防ぐには、紙で受け取るしかありません。 ただし義務の範囲は限られています。
領収証と明細書の交付義務(保険医療機関及び保険医療養担当規則 第5条の2)
| 義務の対象 | |
|---|---|
| 領収証 | 保険医療機関が、療養の給付に係る費用の支払を受けるとき。個別の費用ごとに区分して記載し、無償で交付 |
| 明細書 | 厚生労働大臣の定める保険医療機関(レセプト電子請求を行う施設)。費用の計算の基礎となつた項目ごとに記載し、無償で交付 |
| 自由診療 | この条の対象は保険の療養の給付です。自由診療について明細書の交付義務を定めた規定は、確認できませんでした |
出典:保険医療機関及び保険医療養担当規則 第5条の2(e-Gov法令検索)、厚生労働省保険局長通知 保発0305第18号(令和8年3月5日)。明細書の記載対象は「療養の給付に係る一部負担金等の費用の算定の基礎となった項目」とされています。
★だから、自分で求めることになります。 義務が無いということは、言わなければ出てこないということです。 施術の前に「項目ごとに分けた見積書を紙でください」と頼むのが、いちばん確実です。
費用とリスクが書いていないサイト
医療広告ガイドラインには「広告可能事項の限定解除」という仕組みがあります。 医療法第6条の5第3項は広告してよい事項を16項目に限定していますが、 一定の要件を満たすウェブサイトでは、それ以外のことも書けるようになります。 その要件が4つです。
限定解除の4要件(すべて満たす必要があります)
- ① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
- ② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
- ③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
- ④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
医療法第6条の5の第2項は、広告の基準を3つ挙げています。 ①他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告をしないこと ②誇大な広告をしないこと ③公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告をしないこと、そして厚生労働省令で定める基準です。 公開情報だけで判断する手順はこちらにまとめています。
ガイドラインが名指しした5つの文句
医療広告ガイドラインは「品位を損ねる内容の広告」の例として「費用を強調した広告」を挙げ、 具体的な文句まで書いています。原文のまま並べます。
ガイドラインが例示している表示
| # | 例示されている文句 |
|---|---|
| 1 | 「今なら○円でキャンペーン実施中!」 |
| 2 | 「ただいまキャンペーンを実施中」 |
| 3 | 「期間限定で○○療法を50%オフで提供しています」 |
| 4 | 「○○100,000円 50,000円」 |
| 5 | 「○○治療し放題プラン」 |
出典:厚生労働省 医療広告ガイドライン 令和8年3月30日最終改正、第3-1の「その他」。これらは医療広告の品位を損なうものとして厳に慎むべき内容とされています。
★見た広告がこの5つのどれかに当てはまったら、それ自体が手がかりです。 急がせる理由が割引である場合、その日に決めない根拠が1つ増えます。
体験談とビフォーアフター写真については、ガイドラインが条件を書き分けています。
体験談とビフォーアフター写真
| できない | できる/規制の外 | |
|---|---|---|
| 体験談 | 医療機関が、患者その他の者の主観又は伝聞に基づく治療等の内容・効果に関する体験談を広告すること | 個人が運営するウェブサイト・SNSの個人のページ・第三者が運営する口コミサイト等への掲載で、医療機関が広告料等の便宜を図って掲載を依頼していないなど誘引性が認められない場合は広告に該当しません |
| 治療前後の写真 | 治療等の内容又は効果について患者等を誤認させるおそれがある治療前又は治療後の写真等 | 通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合はこれに当たりません |
出典:同ガイドライン。写真そのものが禁止されているのではなく、説明が付いていない写真が禁止されています。
総額とリスクを紙で出してもらう。そこからが比較です
限定解除の要件は、自由診療なら費用とリスクの情報提供を求めています。公式サイトでそれが確認できるかどうかが、最初の判定材料になります。ABCクリニックは料金を事前に提示し、カウンセリングは無料です。
- カウンセリングは無料。相談だけでも受けられます
- 料金は事前に提示されます。当日の追加費用の有無は必ず確認してください
- 全国に院があり、オンラインでの予約に対応しています
よくある疑問
包茎手術にクーリング・オフは使えますか。
医療ローンを組んでしまいました。
明細書をもらえませんでした。
「今日なら半額」と言われました。
公式サイトに費用が書いてありません。
相談はどこにすればよいですか。
このページの出典
条文と文言は、下記の公表内容のとおりです。確認日は2026年10月3日。
- 特定商取引に関する法律施行規則 第91条(e-Gov法令検索) 令別表第四の二の項の主務省令で定める方法=5つ
- 特定商取引に関する法律施行令 別表第四・第24条(e-Gov法令検索) 期間と金額、解除による損害の額
- 特定商取引に関する法律 第48条・第49条(e-Gov法令検索) クーリング・オフと中途解約
- 消費者庁「特定継続的役務提供(美容医療分野)Q&A」 傷病からの回復を目的とする場合の扱い
- 割賦販売法 第30条の4(e-Gov法令検索)/同施行令 第21条 支払停止の抗弁と、4万円の下限
- 厚生労働省 医療広告ガイドライン 令和8年3月30日最終改正 禁止される広告、限定解除の要件、費用を強調した広告の例
- 医療法 第6条の5(e-Gov法令検索) 広告の規制
- 保険医療機関及び保険医療養担当規則 第5条の2(e-Gov法令検索) 領収証と明細書の交付
- 国民生活センター「美容医療サービス(各種相談の件数や傾向)」 年度別の相談件数
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一次情報の確認先
このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。