待っているだけでは、
順番は動きません
申し込んだのに連絡が来ない。あるいは、申し込んでいいのかも分からない。このまま家で抱えるか、施設に預けて楽になるか——その二択で自分を責めている人がいます。いま、どちらかを決める必要はありません。まず、うちが対象になるのかと、実際どれくらいの人が待っているのかを見てください。順番は申込順ではないので、決める前にやっておけることがあります。
うちは対象になるのか
まずここです。判定の対象になるかどうかは、要介護度で決まります。
判定の対象になる人
| 要介護度 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 要介護3・4・5 | そのまま入所判定の対象 | 介護保険法施行規則第17条の9(認定省令第1条第1項第3号〜第5号) |
| 要介護1・2 | 特例入所の要件に該当すると申し立てれば対象 申込みを受け付けない扱いは認められていません | 同規則第17条の10/平成26年12月12日 老高発1212第1号 |
| 要支援1・2 | 対象外 | — |
2026年9月16日に e-Gov法令検索で確認しました。要介護1・2で「うちは要介護3からです」と断られた場合は、通知に反する扱いです。→ 要介護1・2でも申込みは断れない
どれくらいの人が待っているのか
「20万人待ち」と聞いて、諦めかけている人がいます。その数字の中身を見てください。
特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度・厚生労働省)
| 区分 | 令和7年度 | 令和4年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 要介護3以上の申込者(全国) | 20.6万人 | 25.3万人 | ▲4.7万人(▲18.4%) |
| うち在宅の方 | 8.6万人 | 10.6万人 | ▲2.0万人(▲18.5%) |
厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)」令和7年12月25日公表/調査時点2025年4月1日。全体の20.6万人のうち、在宅で待っているのは8.6万人です。残りは、すでに病院や他の施設にいる人です。
つまり、20.6万人の列の最後尾に並ぶ、という話ではありません。そして順番は申込順ではなく、必要性の高さで決まります。在宅で、介護する側が限界に近い状態は、判定で上位に来る材料そのものです。
待機者数は3年前より4.7万人減っています。「どうせ無理」と決めてしまう前に、いまの状況を書いて出してください。
待っている間に、静かに減るもの
放っておくと減るもの
- 申込みそのもの:有効期間を設けている自治体があります(東京都大田区は評価実施月の翌月から1年。1年以内に入所できない場合は再度申し込みが必要)
- 判定の順番:評価の時期は自治体によって決まっています(大田区は年3回)。次の評価までに書類が届いていなければ、その回は判定されません
- 伝わる事実:半年前に出した紙は、半年前の状況しか伝えません
- 介護する側の体力:これがいちばん先に尽きます
「ずっと待っているのに連絡が来ない」の一部は、失効しているだけです。電話1本で確認できます。→ あなたの市のルールは、ここで変わる
順番を決めているのは何か
特養の入所は、施設の入所検討委員会が決めます。国の通知は、この委員会を置き、合議で決め、協議の内容を記録して2年間保存することを求めています(平成26年12月12日 老高発1212第1号)。つまり、誰かの気分ではなく、基準に当てはめて決められています。
その基準の土台が、省令にはっきり書かれています。
「入所申込者の数が入所定員から入所者の数を差し引いた数を超えている場合には、介護の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、指定介護福祉施設サービスを受ける必要性が高いと認められる入所申込者を優先的に入所させるよう努めなければならない」
指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第7条第2項
条文が「勘案しろ」と書いているもの
| 勘案事項 | 条文・通知の言い方 | あなたの側から動かせるか |
|---|---|---|
| 介護の必要の程度 | 通知は「要介護度を勘案することが考えられる」と説明 | 要介護度は認定で決まる。状態が重くなったら区分変更申請ができる |
| 家族等の状況 | 通知は「単身世帯か否か、同居家族が高齢又は病弱か否か」を例示 | ここが最も伝わっていない。書けば伝わる |
| その他(通知) | 「居宅サービスの利用に関する状況」 | 限度額まで使い切っているかが見られる |
2026年9月15日に e-Gov法令検索と厚生労働省のページで確認しました。配点の付け方は施設と自治体の指針によって違いますが、何を見るかは国が示しています。
ここが肝心です。判定材料の半分は、本人の状態ではなく「介護している側の状況」です。あなたが何時に起こされて、何回転倒に付き添って、何日仕事を休んでいるか。それは、あなたが書かなければ誰にも伝わりません。
全部やらなくていい。今日はこの3つだけ
施設を何件も回る体力はない。書類を作り直す時間もない。それでいいです。効くものから3つだけ選びました。
今日のうちにできること
- ① この1か月に起きたことを、日付でメモする文章にしなくて構いません。「8/3 深夜2時 転倒」「8/12 徘徊で警察」「8/20 私が発熱、休めず」——この形で10行あれば十分です。「毎日大変です」は、判定の材料になりません。日付と回数は材料になります。
- ② ケアマネジャーに、そのメモをそのまま渡す省令第7条第3項は、施設に対して「入所申込者の入所に際しては、その者に係る居宅介護支援事業者に対する照会等により、その者の心身の状況、生活歴、病歴、指定居宅サービス等の利用状況等の把握に努めなければならない」と定めています。ケアマネに伝えた情報は、施設が照会したときに施設へ届く経路にあります。あなたが施設に電話をかけ直さなくても構いません。
- ③ 申込書の「特記事項」「備考」の欄を、空白のままにしない空欄は「特に困っていない」と読まれます。①のメモを3行だけ写してください。きれいな文章でなくていい。数字が入っていれば伝わります。
3つのうち1つだけでも構いません。いちばん効くのは①です。②と③は、①があればすぐ終わります。
もう申し込んである人がやること
申込書は、出したときの状態のまま止まっています。半年前の紙が、いまのあなたの家の状況を伝えることはありません。
状況が変わったら、申込書は出し直せます
- 転倒が増えた・夜間の対応が増えた・徘徊が始まった → その日付を書いて、施設に更新の申し出をする
- 介護する側が入院した・仕事を辞めた・体調を崩した → 家族等の状況が変わった、として伝わる事実です
- 要介護度が上がった → 認定結果の写しを添えて出し直す
- 複数の施設に出している場合 → 更新の出し先は自治体によって違います。各施設に出す市と、市の窓口に一括で出す市があります
- 申し込んでから1年以上たっている → 有効期間を設けている自治体があります。失効していないか確認してください
更新できないという決まりはありません。ただし、出し先と様式は自治体によって違います。各施設に出す市(京都市は様式4の入所申込変更(取下げ)届を各施設へ)もあれば、区の窓口に一括で出す区(大田区は変更届を区へ)もあります。そして、申込みに有効期間を設けていて、放っておくと失効する自治体があります。→ あなたの市のルールは、ここで変わる
出したのに、何も変わらなかった人へ
やり方が間違っていたのではありません。伝える先が1か所しかなかった、という場合がほとんどです。
特養は、定員29人以下(地域密着型)と30人以上で、申し込める住民の範囲が違います。1か所だけに出して待っている状態は、入れる可能性をいちばん狭くしています。→ 申し込み先を増やす
それから、要介護1・2で「うちは要介護3からです」と言われて引き下がった人。それは通知に反する扱いです。→ 要介護1・2でも申込みは断れない
どこから手をつけるか
いまの状態から選ぶ
| いまの状態 | 先に読むページ |
|---|---|
| 申し込んだが、半年以上連絡がない | 申込書に何を書くと伝わるか |
| 要介護1か2で、申込みを断られた | 要介護1・2でも申込みは断れない |
| 1か所しか申し込んでいない | 申し込み先を増やす |
| 入れたとして、払えるか不安 | 先に取っておく認定証がある |
| 順番を待つ間、こちらが持たない | 待っている間をどう持たせるか |
上から順に読む必要はありません。いまの状態に近いものを1つだけ開いてください。
自分の場合はどうなるか
申し込んで1年以上、順番の連絡がまったくない
要介護2だが、夜間の徘徊で家族がもう眠れていない
介護している自分が入院することになった
虐待に近いことをしてしまいそうで、こわい
在宅サービスをまだ限度額まで使っていない
よくある取りこぼし
早く申し込んだ人から順に入ると思っていた
条文に「申込順」という言葉はありません。省令第7条第2項は「必要性が高いと認められる入所申込者を優先的に」と書いています。
本人の要介護度だけで決まると思っていた
勘案事項は「介護の必要の程度及び家族等の状況」です。介護する側の状況は、条文に書かれた判定材料です。
申込書は一度出したら終わりだと思っていた
状況が変われば出し直せます。半年前の紙は、半年前の状況しか伝えません。
「大変です」と書けば伝わると思っていた
基準に当てはめて点数化されるので、抽象的な言葉は材料になりません。日付・回数・時間を書いてください。
要介護1・2は申し込めないと言われて諦めた
特例入所の要件に該当する旨の申立てがあれば、申込みを受け付けない扱いは認められていません。(平成26年12月12日 老高発1212第1号)
申し込み先を増やすと迷惑がかかると思っていた
複数の施設に申し込むことに制限はありません。それぞれが別々に判定します。
よくある疑問
いま何番目か、教えてもらえますか
あとから申し込んだ人が先に入るのは、おかしくないですか
ケアマネに何度も言うのは気が引けます
待っている間、こちらが持ちません
入れたとして、費用はどうなりますか
このサイトは、特養の入所の決まり方を、条文と厚生労働省の通知で確かめて書いています。施設ごとの点数の付け方と、いま何番目かは、施設と市町村が持っている情報です。ここでは、その判定に何が使われるのかと、あなたの側から動かせる部分だけを書きます。
確認に使った一次情報
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第7条e-Gov法令検索
- 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について(平成26年12月12日 老高発1212第1号)厚生労働省
- 介護保険法 第8条第22項・第27項/第51条の3(特定入所者介護サービス費)e-Gov法令検索
- 介護保険法施行規則 第17条の9(要介護状態区分)/第17条の10(特例入所)e-Gov法令検索
- 要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令 第1条第1項e-Gov法令検索
- 厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)」(令和7年12月25日公表・調査時点2025年4月1日)厚生労働省
- 東京都大田区「特別養護老人ホームへの入所を希望される方へ」(優先度評価は年3回・有効期間1年・変更届)大田区
- 京都市「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の入所指針について」(申込みは各施設へ・様式4の変更届)京都市
- 老人福祉法 第11条第1項第2号(措置入所)/第20条の5e-Gov法令検索
2026年9月15日に e-Gov法令検索と厚生労働省のページで確認した条文・通知です。点数の配点は施設と自治体が作る指針で決まるため、ここでは配点を書きません。判定に何が使われるかは、上の条文と通知で確かめられます。
入所を決めなくていい。回らなくなった日に使える手を、いま知っておく
施設に入れるかどうかを、いま決める必要はありません。ただ、家族だけで回らなくなった日に何が使えるかを知らないままだと、その日に選べるものがありません。夜間の見守り、通院の付き添い、家事。家族でなくても任せられる部分だけを、必要な時間だけ頼めます。
- まだ決めていない段階でも相談できます。使うかどうかは、話を聞いてから決められます
- 要介護認定や区分を問いません。介護保険の枠の外のサービスなので、認定を待つ必要がありません
- 相談は無料です。いま頼むかどうかは、金額を聞いてから決められます
特養の申し込みガイドの記事一覧
一次情報の確認先
このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。