家の名義が自分でないなら、先に承諾書を取る
介護保険の住宅改修は、持ち家でなくてもできます。ただし住んでいる人と家の所有者が違う場合、所有者の承諾書が要ります。賃貸住宅はもちろん、子ども名義の家に親が住んでいる場合も同じ扱いです。ここを知らずに工事の話を進めると、申請の直前で止まります。
国の通知に書いてあること
厚生労働省の老企第42号は、次のように書いています。
当該住宅改修を行った被保険者と、住宅の所有者が異なる場合は、当該住宅改修についての所有者の承諾書が必要
短い一文ですが、条件は「賃貸かどうか」ではなく「住んでいる人と所有者が同じかどうか」だと分かります。この違いが効く場面が実際にあります。
誰の承諾が要るのか
住まいの形と、承諾書の要否
| 住まいの形 | 所有者 | 承諾書 |
|---|---|---|
| 自分名義の持ち家 | 本人 | 不要 |
| 賃貸アパート・マンション | 大家さん(貸主) | 必要 |
| 公営住宅 | 自治体(住宅担当部署) | 必要。介護保険担当とは別の窓口 |
| 子ども名義の家に親が住んでいる | 子ども | 必要 |
| 配偶者名義の家 | 配偶者 | 必要 |
| 共有名義(本人と家族の共有) | 共有者全員 | 共有者の承諾が必要になることがある |
承諾書の様式は市区町村が用意していることが多く、窓口でもらえます。要否と様式は市区町村に確認してください。
見落とされやすいのが家族名義のケースです。長年住んでいる家でも、名義が子どもや配偶者になっていれば、制度の上では「所有者が異なる場合」に当たります。同居していても書類は要ります。
登記の名義を確認してから動いてください。「うちの家だから大丈夫」と思っていたら親の名義のままだった、というのは珍しくありません。
共用部分はどうなるか
集合住宅では、玄関の外に出た廊下や階段、エントランスまでのスロープが問題になります。ここは個人の専有部分ではありません。
共用部分で起きること
共用部分は承諾を取る相手が増えるぶん、時間がかかります。早めに動いてください。
分譲マンションの共用廊下に手すりを付けたい
賃貸マンションの階段に手すりを付けたい
公営住宅の玄関前の段差
戸建ての敷地内で、道路から玄関までのスロープ
原状回復をどう扱うか
大家さんが承諾をためらう最大の理由は「出ていくときに元に戻してもらえるのか」です。ここを先に決めておくと話が進みます。
承諾書には、退去時の扱いを書く欄が設けられていることがあります。ありうる決め方は3つです。
退去するときの決め方
| 決め方 | 中身 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 原状回復する | 退去時に本人の費用で元に戻す | 大家さんが工事を嫌がっている場合 |
| そのまま残す | 設備として残し、原状回復は求めない | 手すりなど、次の入居者にも役立つもの |
| 退去時に協議する | そのとき話し合って決める | 先に決めきれない場合 |
どれにするかは当事者間の取り決めです。口約束にせず、承諾書か覚書に残してください。
実務としては、手すりは残すほうが受け入れられやすい傾向があります。手すりは次の入居者にも使えるうえ、撤去すると壁に穴が残るためです。逆に、和式便器を洋式に替えるような設備の入れ替えは、慎重に扱われます。
大家さん・管理会社への頼み方
いきなり「工事をさせてください」と言うと構えられます。順番があります。
承諾を取るまでの順序
- 先に市区町村の窓口で承諾書の様式をもらう白紙で頼むより、決まった紙があるほうが相手も判断しやすくなります。
- 工事の図と見積もりを用意するどこに何を付けるかを、工事業者に図で出してもらいます。写真か図があると話が早い。
- 管理会社がある場合は、まず管理会社へ大家さんに直接行かないでください。順番を飛ばすと話がこじれます。
- 介護保険の住宅改修であることと、費用の負担を伝える費用は本人が出すということを先に言ってください。大家さんの負担だと誤解されることがあります。
- 退去時の扱いについて、こちらの案を先に示す原状回復するか、残すか。案を持っていくほうが決まりやすくなります。
- 承諾書に署名・押印をもらう工事の前にもらってください。着工してからでは申請に間に合いません。
4つ目は大事です。大家さんの負担で工事をしてほしい、という話だと誤解されることがあります。費用は本人が出す、ということを先に伝えてください。
断られたときの代わりの手
承諾が得られないこともあります。その場合、工事をしない方法で同じ問題を解けないかを考えます。
工事をしない代わりの手
| 困っていること | 工事でやること | 工事をしない代わりの手 |
|---|---|---|
| 玄関の段差 | 段差解消の工事 | 置き型の踏み台、据置きスロープ |
| 廊下・トイレで支えがない | 手すりの取付け | 床と天井で突っ張る手すり、置き型手すり |
| 浴槽が高くて跨げない | 浴室の床のかさ上げ | 浴槽内いす、バスボード、浴槽用手すり |
| 和式便器が使えない | 洋式への取替え | 据置き型の洋式便座(自治体により扱いが異なる) |
工事をしない用具は、介護保険の住宅改修ではなく福祉用具の枠で扱われます。貸与になるか購入になるかは種目によります。ケアマネジャーに相談してください。
用具のほうは借りるか買うかを選べるものがあります。借りるか買うかを選ぶにまとめました。
確認の順序
借りている家で工事するときの順序
- 登記の名義を確認する。家族名義でも承諾書は要る
- 市区町村の窓口で、承諾書の様式と必要書類の一覧をもらう
- 工事する場所が専有部分か共用部分かを分ける
- 共用部分なら、管理組合・管理会社・自治体の住宅担当に先に当たる
- 退去時の扱い(原状回復か、残すか)についてこちらの案を決める
- 承諾書に署名をもらってから、事前申請する
大家の承諾を待っている間に、何度転ぶか
承諾が取れない、共用部分に手が入れられない。そういう住まいでも、入浴や移動の介助を人の手で補う方法があります。相談・見積もりは無料です。
- 相談は無料です。いま頼むかどうかは、金額を聞いてから決められます
- 介護保険で断られた用事から話して構いません
→ 先に出すお金を10分の1にする払い方/理由書は誰が書くのか/工事のあとに気づいたとき/20万円は何回に分けられるか/借りている家で工事するとき/借りるか買うかを選ぶ/保険で頼めないこと一覧
確認に使った一次情報
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修の概要」(介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会 第1回 参考資料2)https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001501983.pdf
- 厚生労働省 老企第42号「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」法令等データベース
- 公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)とは
- 横浜市「介護保険の住宅改修費について」横浜市 住宅改修費
- 江東区「介護保険住宅改修費の支給」江東区 住宅改修費の支給
- 墨田区「住宅改修費受領委任払い(事業者登録)」墨田区 受領委任払い
- 板橋区「介護保険住宅改修費等受領委任払い」板橋区 受領委任払い
- 町田市「住宅改修の事前申請」町田市 事前申請
- 北区「福祉用具購入費・住宅改修費の代理受領方式」北区 代理受領方式
よくある疑問
同居している子どもの名義です。それでも承諾書が要りますか。
大家さんが遠方に住んでいます。郵送でもよいですか。
承諾書に大家さんが費用を出すとは書きませんよね。
サービス付き高齢者向け住宅に住んでいます。使えますか。
公営住宅です。どこに聞けばよいですか。
承諾を得る前に工事の見積もりを取ってよいですか。
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- 社会福祉法人の負担軽減
- ケアプランは自分で作れる
- 養護老人ホームの措置入所
- 要介護の区分変更申請
- 特別障害者手当
- おむつと日常生活用具
- 障害者控除対象者認定書
- 高額介護サービス費
- 受領委任払い
- 家族介護慰労金
- 障害福祉の負担上限月額
- 高額医療・高額介護合算療養費
- 重度障害者医療費助成
- 自動車税の減免
- 住宅改修が必要な理由書
- 住宅改修の事前申請
- 住宅改修20万円の枠
- 福祉用具の貸与と販売の選択制
- 見積もりと業者の選び方
- 申請の期限(2年)
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- 負担割合証の見方
- 保険料を滞納したとき
- 保険者と引っ越し
- 2年で消える権利
本ページは介護保険の住宅改修についての一般的な整理です。申請の様式・期限・受領委任払いの有無は市区町村ごとに異なります。実際の手続きは、担当のケアマネジャーと、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。
一次情報の確認先
このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。