払ってから戻すのではなく、市が病院へ直接払う
医療費が高額になったとき、あとから戻ってくる仕組みが高額療養費です。ただし「あとから」なので、いったんは窓口で払わなければなりません。これを避ける「受領委任払い」を用意している市区町村があります。ただし先に書いておきます。東京23区では、13区を調べて1区も見つかりませんでした。23区にあるのは「貸付」で、その貸付も廃止が進んでいます。江戸川区は2018年に条例を廃止しました。理由は「貸付に代わる制度が整備された」から。いま使うのは限度額適用認定証です。
東京23区にはあるのか
この制度を説明している自治体は、検索すると相模原市・厚木市・稲沢市・高槻市などが出てきます。では東京23区はどうなのか。調べました。
東京23区の国民健康保険に「高額療養費の受領委任払い」はあるか(2026年9月20日確認)
| 区 | 受領委任払い | 代わりにあるもの |
|---|---|---|
| 中央区 | 確認できず | 高額療養資金の貸付 |
| 新宿区 | 確認できず | 高額療養費貸付(無利子・支給予定額の90%) |
| 文京区 | 確認できず | 高額療養費の貸付 |
| 墨田区 | 確認できず | 療養資金の貸付 |
| 目黒区 | 確認できず | 高額療養費の貸し付け/一部負担金の減額・免除 |
| 世田谷区 | 確認できず | 高額療養費資金の貸付 |
| 杉並区 | 確認できず | 高額療養費・出産育児一時金の貸付制度 |
| 葛飾区 | 確認できず | 高額療養費資金貸付 |
| 足立区 | 確認できず | 療養資金の貸付(無利子・支給予定額の90%) |
| 江戸川区 | 確認できず | 貸付条例は2018年3月23日に廃止済み |
| 豊島区 | 確認できず | 貸付のページが現在表示されない |
| 練馬区 | 確認できず | 貸付のページが現在表示されない |
| 千代田区 | 確認できず | 高額療養費のページに貸付の記載なし。限度額適用認定証のみ |
出典:各区の公式サイト。当サイトが2026年9月20日に確認しました。13区を確認した範囲で、「受領委任払い」という名前の制度は1区も見つかりませんでした。残る10区(港・台東・江東・品川・大田・渋谷・中野・北・荒川・板橋)は確認できていません。「確認できず」は「制度が無い」という意味ではなく、公式サイトで見つけられなかったという意味です。
13区を調べて、「受領委任払い」という名前の制度は1区も見つかりませんでした。代わりに出てきたのは「貸付」です。名前も仕組みも違います。
受領委任払いと貸付は、別のもの
| 受領委任払い | 貸付 | |
|---|---|---|
| 誰が病院に払うか | 市区町村が直接払う | 自分が払う(借りたお金で) |
| 返すのか | 返さない(給付そのもの) | 返す。ただし高額療養費の支給分と相殺される |
| 利息 | — | 無利子の区が多い |
| 借りられる額 | — | 支給予定額の9割前後 |
結果として「窓口で全額を払わずに済む」点は同じですが、手続きも窓口での呼び方も違います。区の窓口で「受領委任払いはありますか」と聞くと「ありません」と言われます。「貸付はありますか」と聞いてください。
その貸付も、役割を終えつつある
調べているうちに、もっと大事なことが出てきました。貸付そのものが廃止されています。
貸付が廃止された理由(江戸川区・区議会の議決)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 条例名 | 江戸川区国民健康保険高額療養費資金及び出産費資金貸付条例を廃止する条例 |
| 議決日 | 2018年(平成30年)3月23日 |
| 廃止の理由 | 「貸付に代わる制度が整備され、貸付実績が減少していることから、その役割を終えたものと考えられるため」 |
出典:江戸川区議会の議決情報。「貸付に代わる制度」とは、限度額適用認定証のことです。先に認定証を出しておけば、窓口の支払いが最初から自己負担限度額までで済みます。立て替えが起きないので、貸すものも無くなった、という流れです。2026年9月20日に確認しました。
豊島区と練馬区は、検索すると貸付のページが出てくるのに、開くと表示されません。ネットに残っている情報と、いまの制度がずれています。「貸付がある」と書いてあるページを見つけても、日付を確かめてください。
なぜ廃止されるのか。江戸川区が理由をはっきり書いています。「貸付に代わる制度が整備され、貸付実績が減少している」。先に限度額適用認定証を出しておけば、そもそも立て替えが起きません。だから借りる必要がなくなった、ということです。
いま、窓口で払えないときに使うのはどれか
いま、窓口で払えないときに使うもの
| 順番 | 制度 | 何が起きるか | 手続き |
|---|---|---|---|
| ① | 限度額適用認定証 | 窓口の支払いが最初から自己負担限度額までになる | マイナ保険証を使えば申請は要りません。紙の保険証なら事前に区へ申請 |
| ② | 高額療養費貸付(ある区のみ) | 支給予定額の9割前後を無利子で借り、あとで支給分と相殺する | 区の国保担当課。予約が要る区や、廃止した区があります |
| ③ | 一部負担金の減額・免除・徴収猶予 | 窓口で払う額そのものが減る、または払わなくてよくなる | 国民健康保険法44条。「特別の理由がある被保険者で、一部負担金を支払うことが困難」な場合 |
出典:国民健康保険法44条(e-Gov法令検索)ほか。①で足りるなら②③は要りません。①を出しても払えない、というときに③を聞いてください。44条は、減額・免除・徴収猶予の3つを保険者ができると定めています。2026年9月20日に条文を確認しました。
①でだいたい片が付きます。マイナ保険証を使っているなら、限度額適用認定証の申請すら要りません。窓口で提示すれば、自己負担限度額までの支払いで済みます。
問題は、その自己負担限度額すら払えないときです。そこで③の国民健康保険法44条です。条文は、保険者が①一部負担金を減額する ②支払いを免除する ③徴収を猶予する、の3つをできると定めています。「減免はありますか」ではなく「一部負担金の減免・徴収猶予はできますか」と、条文の言葉で聞いてください。
仕組み
相模原市は、この制度をこう説明しています。
自己負担限度額だけを病院等へお支払いいただき、自己負担限度額を超えた高額療養費に相当する金額を相模原市が直接病院等へ支払う
出典:相模原市「高額療養費受領委任払」
厚木市も「高額療養費として支給される金額を厚木市国保から直接医療機関へ支払う」としています。
支払い方の違い
| 原則(あとから払い戻し) | 受領委任払い | |
|---|---|---|
| 窓口で払う額 | いったん請求額の全部 | 自己負担限度額まで |
| 残りの流れ | あとから本人に高額療養費が支給される | 市から医療機関へ直接 |
| 用意するお金 | 請求額の全部 | 自己負担限度額の分 |
| どこでも使えるか | 使える | 制度がある市区町村で、協定を結んだ医療機関の場合 |
出典:厚木市・相模原市の公表内容から整理。制度の有無と条件は市区町村ごとに異なります。
限度額適用認定証との違い
似た仕組みに「限度額適用認定証」があります。これも窓口の支払いを自己負担限度額までにするものです。違いは、いつの分に使えるかです。
限度額適用認定証と受領委任払い
| 限度額適用認定証 | 受領委任払い | |
|---|---|---|
| 使える診療分 | 認定証を提示した以降の診療分 | 相模原市は「申請月以前の診療分についても、適用することができます」 |
| 手続きの相手 | 保険者(市区町村など)に交付を申請し、医療機関に提示 | 市と医療機関の両方が関わる |
| 医療機関の同意 | 不要 | 必要(協定・許可) |
| 制度の広がり | 全国の制度 | 市区町村ごとの制度 |
出典:相模原市の記載から整理。マイナ保険証を使うと認定証がなくても限度額の適用を受けられる場合があります。詳しくは加入している保険者にご確認ください。
すでに支払ってしまったあとの分をどうするか、という場面では受領委任払いのほうが使えることがあります。相模原市はこの点を明記しています。
医療機関との協定
この制度は、市と医療機関の合意があって初めて成り立ちます。
事前に厚木市国保と医療機関との間で「協定」が必要
出典:厚木市「高額療養費受領委任払い制度」
相模原市も「事前に病院等の許可を得ていただくことが必要」としています。
つまり、かかっている病院が協定を結んでいなければ使えません。制度がある市区町村でも、すべての医療機関で使えるわけではありません。病院の医事課・会計窓口に確認することになります。
使える条件
実際に確認できた条件
- 厚木市:原則として国民健康保険料を滞納していない世帯
- 厚木市:市の国保と医療機関の間に協定があること
- 相模原市:事前に病院等の許可を得ていること
- 医療機関からの請求書(厚木市は1か月分の月間請求書を持参)
- 本人確認書類(厚木市は世帯主の本人確認書類/相模原市はマイナンバーの番号確認・身元確認書類)
保険料の滞納は、多くの市区町村で条件になっています。心当たりがあれば、まず納付相談をしてください。分割の相談に応じている市区町村があります。
対象にならないもの
高額療養費の対象外になるもの
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 差額ベッド代 | 対象外(相模原市の記載) |
| 入院時の食事代 | 対象外(相模原市の記載) |
| 保険診療の対象外の請求分 | 対象外(厚木市の記載) |
| 先進医療の技術料など | 保険外の部分は対象外 |
出典:厚木市・相模原市の公表内容から。これらは受領委任払いを使っても、自分で支払う部分です。
入院の請求書には、保険が効く部分と効かない部分が混ざっています。受領委任払いで軽くなるのは、保険が効く部分のうち自己負担限度額を超えた分だけです。
手続きの流れ
厚木市・相模原市の記載から整理した流れ
- 市の国保担当課に制度があるか確認する無い市区町村があります。
- 医療機関が協定を結んでいるか確認する病院の会計窓口・医事課へ。相模原市は「事前に病院等の許可」が必要。
- 医療機関から請求書をもらう厚木市は1か月分の月間請求書を持参。
- 市の窓口で申請する本人確認書類を持参。
- 市が条件を確認し、申請書を交付する厚木市は限度額を記載した申請書を交付。
- 窓口で自己負担限度額を支払う残りは市から医療機関へ。
自分の場合はどうなるか
すでに窓口で全額払ってしまった
かかっている病院が協定を結んでいなかった
保険料の滞納がある
国民健康保険ではなく、健康保険(被用者保険)に加入している
世帯主が亡くなっている
入院が長引きそうで、月をまたぐ
よくある取りこぼし
病院に確認せずに市へ行った
医療機関の協定・許可が前提です。先に病院の会計窓口で確認してください。
差額ベッド代も軽くなると思っていた
保険外の部分は対象外です。相模原市は差額ベッド代と入院時の食事代を対象外としています。
保険料の滞納があった
対象外になることがあります。納付相談を先に。
加入している保険を取り違えていた
これは市区町村の国民健康保険の制度です。勤め先の健康保険では別の仕組みになります。
請求書を持って行かなかった
厚木市は医療機関からの月間請求書(1か月分)の持参を求めています。
確認の順序
どこから確認するか
- 加入している保険を確認する国民健康保険か、勤め先の健康保険か。
- 市の国保担当課に電話する受領委任払いの制度があるか。
- 病院の会計窓口に聞く市と協定を結んでいるか。
- 保険料の納付状況を確認する滞納があると対象外になることがあります。
- 請求書と本人確認書類を用意する市区町村によって必要書類が違います。
- 限度額適用認定証と比べるどちらが自分の場面に合うか。
確認に使った一次情報
- 厚木市「高額療養費受領委任払い制度」 厚木市 高額療養費受領委任払い制度
- 相模原市「高額療養費受領委任払」 相模原市 高額療養費受領委任払
よくある疑問
受領委任払いはどの市区町村にもありますか。
限度額適用認定証があれば、受領委任払いは要りませんか。
どの病院でも使えますか。
勤め先の健康保険でも同じ制度がありますか。
食事代や差額ベッド代も軽くなりますか。
窓口で払えない状況の人に、有料のサービスを勧めるのは筋が違うと考えています。代わりに、次に必ず来る場面への行き先だけ置きます。高額療養費が問題になるのは入院・手術のときで、その次に来るのは退院後の生活です。→ 退院直後の在宅介護|最初の2週間で決まること/介護保険で頼めないこと一覧
介護保険で頼めないことの記事一覧
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- 高齢者の配食サービスは安否確認とセット
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- 住宅改修は介護保険の外にも給付
- 社会福祉法人の負担軽減
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- 養護老人ホームの措置入所
- 要介護の区分変更申請
- 特別障害者手当
- おむつと日常生活用具
- 障害者控除対象者認定書
- 高額介護サービス費
- 受領委任払い
- 家族介護慰労金
- 障害福祉の負担上限月額
- 高額医療・高額介護合算療養費
- 重度障害者医療費助成
- 自動車税の減免
- 住宅改修が必要な理由書
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- 負担割合証の見方
- 保険料を滞納したとき
- 保険者と引っ越し
- 2年で消える権利
本ページは支払い方法の制度についての一般的な整理です。制度の有無・名称・対象・手続きは市区町村ごとに異なります。実際の手続きは、お住まいの市区町村の担当課にご確認ください。
一次情報の確認先
このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。