払ってから戻すのではなく、市が病院へ直接払う

医療費が高額になったとき、あとから戻ってくる仕組みが高額療養費です。ただし「あとから」なので、いったんは窓口で払わなければなりません。これを避ける「受領委任払い」を用意している市区町村があります。ただし先に書いておきます。東京23区では、13区を調べて1区も見つかりませんでした。23区にあるのは「貸付」で、その貸付も廃止が進んでいます。江戸川区は2018年に条例を廃止しました。理由は「貸付に代わる制度が整備された」から。いま使うのは限度額適用認定証です。

本ページは支払い方法の手続きについての整理です。 病気や治療の内容については扱いません。 制度の有無・条件は市区町村と加入している保険によって異なります。 国民健康保険については、お住まいの市区町村の国保担当課にご確認ください。
このページの内容
  1. 東京23区にはあるのか
  2. その貸付も役割を終えつつある
  3. いま使うのはどれか
  4. 仕組み
  5. 限度額適用認定証との違い
  6. 医療機関との協定
  7. 使える条件
  8. 対象にならないもの
  9. 手続きの流れ
  10. 自分の場合はどうなるか
  11. よくある取りこぼし
  12. 確認の順序
  13. 確認に使った一次情報
  14. よくある疑問

東京23区にはあるのか

この制度を説明している自治体は、検索すると相模原市・厚木市・稲沢市・高槻市などが出てきます。では東京23区はどうなのか。調べました。

東京23区の国民健康保険に「高額療養費の受領委任払い」はあるか(2026年9月20日確認)

区受領委任払い代わりにあるもの
中央区確認できず高額療養資金の貸付
新宿区確認できず高額療養費貸付(無利子・支給予定額の90%)
文京区確認できず高額療養費の貸付
墨田区確認できず療養資金の貸付
目黒区確認できず高額療養費の貸し付け/一部負担金の減額・免除
世田谷区確認できず高額療養費資金の貸付
杉並区確認できず高額療養費・出産育児一時金の貸付制度
葛飾区確認できず高額療養費資金貸付
足立区確認できず療養資金の貸付(無利子・支給予定額の90%)
江戸川区確認できず貸付条例は2018年3月23日に廃止済み
豊島区確認できず貸付のページが現在表示されない
練馬区確認できず貸付のページが現在表示されない
千代田区確認できず高額療養費のページに貸付の記載なし。限度額適用認定証のみ

出典:各区の公式サイト。当サイトが2026年9月20日に確認しました。13区を確認した範囲で、「受領委任払い」という名前の制度は1区も見つかりませんでした。残る10区(港・台東・江東・品川・大田・渋谷・中野・北・荒川・板橋)は確認できていません。「確認できず」は「制度が無い」という意味ではなく、公式サイトで見つけられなかったという意味です。

13区を調べて、「受領委任払い」という名前の制度は1区も見つかりませんでした。代わりに出てきたのは「貸付」です。名前も仕組みも違います。

受領委任払いと貸付は、別のもの

受領委任払い貸付
誰が病院に払うか市区町村が直接払う自分が払う(借りたお金で)
返すのか返さない(給付そのもの)返す。ただし高額療養費の支給分と相殺される
利息—無利子の区が多い
借りられる額—支給予定額の9割前後

結果として「窓口で全額を払わずに済む」点は同じですが、手続きも窓口での呼び方も違います。区の窓口で「受領委任払いはありますか」と聞くと「ありません」と言われます。「貸付はありますか」と聞いてください。

その貸付も、役割を終えつつある

調べているうちに、もっと大事なことが出てきました。貸付そのものが廃止されています。

貸付が廃止された理由(江戸川区・区議会の議決)

項目内容
条例名江戸川区国民健康保険高額療養費資金及び出産費資金貸付条例を廃止する条例
議決日2018年(平成30年)3月23日
廃止の理由「貸付に代わる制度が整備され、貸付実績が減少していることから、その役割を終えたものと考えられるため」

出典:江戸川区議会の議決情報。「貸付に代わる制度」とは、限度額適用認定証のことです。先に認定証を出しておけば、窓口の支払いが最初から自己負担限度額までで済みます。立て替えが起きないので、貸すものも無くなった、という流れです。2026年9月20日に確認しました。

豊島区と練馬区は、検索すると貸付のページが出てくるのに、開くと表示されません。ネットに残っている情報と、いまの制度がずれています。「貸付がある」と書いてあるページを見つけても、日付を確かめてください。

なぜ廃止されるのか。江戸川区が理由をはっきり書いています。「貸付に代わる制度が整備され、貸付実績が減少している」。先に限度額適用認定証を出しておけば、そもそも立て替えが起きません。だから借りる必要がなくなった、ということです。

いま、窓口で払えないときに使うのはどれか

いま、窓口で払えないときに使うもの

順番制度何が起きるか手続き
①限度額適用認定証窓口の支払いが最初から自己負担限度額までになるマイナ保険証を使えば申請は要りません。紙の保険証なら事前に区へ申請
②高額療養費貸付(ある区のみ)支給予定額の9割前後を無利子で借り、あとで支給分と相殺する区の国保担当課。予約が要る区や、廃止した区があります
③一部負担金の減額・免除・徴収猶予窓口で払う額そのものが減る、または払わなくてよくなる国民健康保険法44条。「特別の理由がある被保険者で、一部負担金を支払うことが困難」な場合

出典:国民健康保険法44条(e-Gov法令検索)ほか。①で足りるなら②③は要りません。①を出しても払えない、というときに③を聞いてください。44条は、減額・免除・徴収猶予の3つを保険者ができると定めています。2026年9月20日に条文を確認しました。

①でだいたい片が付きます。マイナ保険証を使っているなら、限度額適用認定証の申請すら要りません。窓口で提示すれば、自己負担限度額までの支払いで済みます。

問題は、その自己負担限度額すら払えないときです。そこで③の国民健康保険法44条です。条文は、保険者が①一部負担金を減額する ②支払いを免除する ③徴収を猶予する、の3つをできると定めています。「減免はありますか」ではなく「一部負担金の減免・徴収猶予はできますか」と、条文の言葉で聞いてください。

仕組み

相模原市は、この制度をこう説明しています。

自己負担限度額だけを病院等へお支払いいただき、自己負担限度額を超えた高額療養費に相当する金額を相模原市が直接病院等へ支払う

出典:相模原市「高額療養費受領委任払」

厚木市も「高額療養費として支給される金額を厚木市国保から直接医療機関へ支払う」としています。

支払い方の違い

原則(あとから払い戻し)受領委任払い
窓口で払う額いったん請求額の全部自己負担限度額まで
残りの流れあとから本人に高額療養費が支給される市から医療機関へ直接
用意するお金請求額の全部自己負担限度額の分
どこでも使えるか使える制度がある市区町村で、協定を結んだ医療機関の場合

出典:厚木市・相模原市の公表内容から整理。制度の有無と条件は市区町村ごとに異なります。

限度額適用認定証との違い

似た仕組みに「限度額適用認定証」があります。これも窓口の支払いを自己負担限度額までにするものです。違いは、いつの分に使えるかです。

限度額適用認定証と受領委任払い

限度額適用認定証受領委任払い
使える診療分認定証を提示した以降の診療分相模原市は「申請月以前の診療分についても、適用することができます」
手続きの相手保険者(市区町村など)に交付を申請し、医療機関に提示市と医療機関の両方が関わる
医療機関の同意不要必要(協定・許可)
制度の広がり全国の制度市区町村ごとの制度

出典:相模原市の記載から整理。マイナ保険証を使うと認定証がなくても限度額の適用を受けられる場合があります。詳しくは加入している保険者にご確認ください。

すでに支払ってしまったあとの分をどうするか、という場面では受領委任払いのほうが使えることがあります。相模原市はこの点を明記しています。

医療機関との協定

この制度は、市と医療機関の合意があって初めて成り立ちます。

事前に厚木市国保と医療機関との間で「協定」が必要

出典:厚木市「高額療養費受領委任払い制度」

相模原市も「事前に病院等の許可を得ていただくことが必要」としています。

つまり、かかっている病院が協定を結んでいなければ使えません。制度がある市区町村でも、すべての医療機関で使えるわけではありません。病院の医事課・会計窓口に確認することになります。

使える条件

実際に確認できた条件

保険料の滞納は、多くの市区町村で条件になっています。心当たりがあれば、まず納付相談をしてください。分割の相談に応じている市区町村があります。

対象にならないもの

高額療養費の対象外になるもの

項目扱い
差額ベッド代対象外(相模原市の記載)
入院時の食事代対象外(相模原市の記載)
保険診療の対象外の請求分対象外(厚木市の記載)
先進医療の技術料など保険外の部分は対象外

出典:厚木市・相模原市の公表内容から。これらは受領委任払いを使っても、自分で支払う部分です。

入院の請求書には、保険が効く部分と効かない部分が混ざっています。受領委任払いで軽くなるのは、保険が効く部分のうち自己負担限度額を超えた分だけです。

手続きの流れ

厚木市・相模原市の記載から整理した流れ

  1. 市の国保担当課に制度があるか確認する無い市区町村があります。
  2. 医療機関が協定を結んでいるか確認する病院の会計窓口・医事課へ。相模原市は「事前に病院等の許可」が必要。
  3. 医療機関から請求書をもらう厚木市は1か月分の月間請求書を持参。
  4. 市の窓口で申請する本人確認書類を持参。
  5. 市が条件を確認し、申請書を交付する厚木市は限度額を記載した申請書を交付。
  6. 窓口で自己負担限度額を支払う残りは市から医療機関へ。

自分の場合はどうなるか

すでに窓口で全額払ってしまった

原則どおり、高額療養費の支給申請をすれば戻ります。また相模原市は受領委任払いについて「申請月以前の診療分についても、適用することができます」としています。扱いは市区町村ごとに違うため、窓口で確認してください。

かかっている病院が協定を結んでいなかった

その病院では受領委任払いは使えません。限度額適用認定証やマイナ保険証による限度額適用が使えるかを確認してください。

保険料の滞納がある

厚木市は「原則として……滞納していない世帯の方」を対象としています。まず納付相談をしてください。

国民健康保険ではなく、健康保険(被用者保険)に加入している

この制度は市区町村の国民健康保険の制度です。健康保険組合・協会けんぽ・共済組合では扱いが異なります。加入している保険者にご確認ください。

世帯主が亡くなっている

相模原市は「相続人と被相続人の関係がわかる戸籍などの書類(写しでも可)を添付の上、申請」としています。

入院が長引きそうで、月をまたぐ

高額療養費は月ごとに計算します。月をまたぐと、それぞれの月で限度額まで払うことになります。手続きも月ごとになることがあります。窓口で確認してください。

よくある取りこぼし

病院に確認せずに市へ行った

医療機関の協定・許可が前提です。先に病院の会計窓口で確認してください。

差額ベッド代も軽くなると思っていた

保険外の部分は対象外です。相模原市は差額ベッド代と入院時の食事代を対象外としています。

保険料の滞納があった

対象外になることがあります。納付相談を先に。

加入している保険を取り違えていた

これは市区町村の国民健康保険の制度です。勤め先の健康保険では別の仕組みになります。

請求書を持って行かなかった

厚木市は医療機関からの月間請求書(1か月分)の持参を求めています。

確認の順序

どこから確認するか

  1. 加入している保険を確認する国民健康保険か、勤め先の健康保険か。
  2. 市の国保担当課に電話する受領委任払いの制度があるか。
  3. 病院の会計窓口に聞く市と協定を結んでいるか。
  4. 保険料の納付状況を確認する滞納があると対象外になることがあります。
  5. 請求書と本人確認書類を用意する市区町村によって必要書類が違います。
  6. 限度額適用認定証と比べるどちらが自分の場面に合うか。

確認に使った一次情報

よくある疑問

受領委任払いはどの市区町村にもありますか。

ありません。市区町村の国民健康保険がそれぞれ実施要綱を定めて運用している制度です。お住まいの市区町村の国保担当課にご確認ください。

限度額適用認定証があれば、受領委任払いは要りませんか。

場面によります。限度額適用認定証は提示した以降の診療分に使います。相模原市は受領委任払いについて「申請月以前の診療分についても、適用することができます」としており、すでに発生した分に使える点が違います。

どの病院でも使えますか。

使えません。厚木市は「事前に厚木市国保と医療機関との間で『協定』が必要」、相模原市は「事前に病院等の許可を得ていただくことが必要」としています。かかっている病院に確認してください。

勤め先の健康保険でも同じ制度がありますか。

この制度は市区町村の国民健康保険のものです。健康保険組合・協会けんぽ・共済組合では扱いが異なります。加入先にご確認ください。

食事代や差額ベッド代も軽くなりますか。

なりません。相模原市は差額ベッド代などの保険適用外のものや入院時の食事代を対象外としています。厚木市も保険診療対象外の請求分は高額療養費の対象にならないとしています。

介護のほうの高額介護サービス費とは別ですか。

別の制度です。介護保険の自己負担が高額になったときの仕組みは高額介護サービス費です。医療と介護の両方が高額になったときは合算の制度があります。→ 高額介護サービス費/医療と介護の合算
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介護保険で頼めないことの記事一覧

このページが扱う範囲
本ページは支払い方法の制度についての一般的な整理です。制度の有無・名称・対象・手続きは市区町村ごとに異なります。実際の手続きは、お住まいの市区町村の担当課にご確認ください。

一次情報の確認先

このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。

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