同じ用具でも、借りるか買うかを選べるものがある
介護保険の福祉用具は、長く「これは借りるもの」「これは買うもの」と種目ごとに決まっていました。いまは一部の種目について、借りるか買うかを利用者が選べるようになっています。どれが対象で、選ぶときに何を聞けばよいのかを整理します。
選択制の対象になっている種目
厚生労働省の資料は、貸与と販売の選択制の対象種目を次のように示しています。
固定用スロープ、歩行器(歩行車は除く)、歩行補助つえ(松葉杖は除く)
選択制の対象と、対象でないもの
| 種目 | 選択制 | 注意点 |
|---|---|---|
| 固定用スロープ | 対象 | 工事を伴わない、持ち運べるもの |
| 歩行器 | 対象 | 歩行車は除かれます |
| 歩行補助つえ | 対象 | 松葉杖は除かれます |
| 車いす・特殊寝台・手すり(工事なし)など | 対象外 | 従来どおり貸与 |
| 入浴・排泄に使うもの | 対象外 | 従来どおり特定福祉用具販売(購入) |
括弧の中の除外に注意してください。歩行車と松葉杖は選択制の対象ではありません。見た目が近いので、事業者に「これは選択制の対象ですか」と直接確認してください。
括弧書きが効きます。「歩行器」と「歩行車」、「歩行補助つえ」と「松葉杖」は、日常の言葉ではほとんど区別されません。用具の名前だけで判断せず、事業者に確認するのが確実です。
借りる場合と買う場合で何が変わるか
貸与と販売の違い
| 貸与(借りる) | 販売(買う) | |
|---|---|---|
| 毎月の支払い | 使っている間ずっと続く | 最初の1回だけ |
| 体に合わなくなったとき | 別のものに交換できる | 買い直しになる |
| こわれたとき | 事業者が対応する | 自分で修理・買い替え |
| 点検・調整 | 定期的に事業者が入る | 自分で管理する |
| 長く使ったときの総額 | 使う期間が長いほど増える | 増えない |
| 支給限度基準額(区分支給限度額) | 枠を使う | 枠とは別の扱い |
最後の行が見落とされます。貸与は毎月の区分支給限度基準額を使うので、訪問介護やデイサービスの枠を圧迫します。購入はその枠を使いません。
最後の1行が判断を変えることがあります。訪問介護やデイサービスを目いっぱい使っている人にとって、貸与は他のサービスの枠を削ります。購入に切り替えると、その分の枠が空きます。
事業者から受けるべき説明
選べるようになったということは、選ぶための材料を渡してもらう必要があるということです。厚生労働省の資料は、事業者が行うこととして次を挙げています。
同一種目における機能や、価格の異なる複数の福祉用具に関する情報等を提供
つまり、1つの商品だけを見せて「これです」と言われる状態は、本来の姿ではありません。次のことを聞いてください。
福祉用具専門相談員に聞くこと
- この種目は選択制の対象ですか。歩行車・松葉杖には当たりませんか
- 同じ機能で、価格の違うものを何種類か見せてください
- 借りた場合、月にいくらですか。自己負担はいくらですか
- 買った場合、いくらですか。自己負担はいくらですか
- 何か月使うと、借りるより買うほうが安くなりますか
- 買った場合、点検や修理はどうなりますか
- 体の状態が変わって合わなくなったら、どうなりますか
- 借りた場合、区分支給限度基準額をどれだけ使いますか
5つ目と8つ目は、事業者から自発的に出てくるとは限りません。こちらから聞いてください。
借りるか、買うか
選び方が分かれる場面
「安いほうを選ぶ」ではなく、状態が変わる見込みがあるかどうかで分かれます。
退院直後で、これから体の状態が変わりそう
状態が安定していて、何年も同じものを使いそう
訪問介護やデイサービスで区分支給限度基準額をほぼ使い切っている
屋外で使う、雨に濡れる、荒く使う
本人が使いこなせるか、まだ分からない
選んだあとに変わること
購入を選ぶと、事業者が定期的に訪問する仕組みが、貸与と同じようには働きません。用具は使っているうちに、ねじがゆるみ、ゴムがすり減ります。歩行器や杖は、そこが転倒に直結します。
買ったあとに起きること
すり減りに気づかない
杖の先ゴム、歩行器の車輪とグリップは消耗品です。月に一度は自分で見てください。すり減った先ゴムは滑ります。
体が変わったのに、同じ高さで使い続ける
身長や姿勢が変わると、合う高さも変わります。ケアマネジャーの訪問時に、高さを見てもらってください。
修理を頼む先が分からなくなる
買った事業者と連絡先を控えておいてください。購入時の書類は捨てないでください。
介護保険の記録に残らないと思い込む
購入も介護保険の給付です。同じ種目を何度も買うことはできません。買った記録は残ります。
住宅改修との使い分け
スロープと手すりは、工事をするかどうかで扱いが変わります。ここが混乱のもとです。
同じ「スロープ」「手すり」でも扱いが違う
| やること | 扱い | 使う枠 |
|---|---|---|
| 置くだけのスロープ | 福祉用具(選択制の対象) | 貸与なら区分支給限度基準額/購入は別枠 |
| 工事で固定するスロープ | 住宅改修 | 生涯20万円の枠 |
| 置き型・突っ張り式の手すり | 福祉用具貸与 | 区分支給限度基準額 |
| 壁に取り付ける手すり | 住宅改修 | 生涯20万円の枠 |
工事をすれば住宅改修、工事をしなければ福祉用具が基本の分かれ目です。どちらで進めるかによって、申請の窓口も書類も変わります。
住宅改修の20万円をどう使うかは20万円は何回に分けられるかに、借りている家での進め方は借りている家で工事するときにまとめました。
確認の順序
福祉用具で損をしないための順序
- その種目が選択制の対象かどうかを事業者に確認する
- 同じ機能で価格の違うものを複数見せてもらう
- 借りた場合と買った場合の、自己負担額を両方出してもらう
- 何か月で逆転するかを計算してもらう
- いまの区分支給限度基準額をどれだけ使っているか、ケアマネジャーに確認する
- 体の状態が変わる見込みがあるかを、リハビリの担当者に聞く
- 工事をするほうがよくないか(住宅改修の枠が残っていないか)も並べて考える
借りても買っても、支える人は別に要ります
歩行器があっても、外出には付き添いが要ることがあります。制度で埋まらない部分だけを必要な分だけ頼む方法があります。相談・見積もりは無料です。
- 相談は無料です。いま頼むかどうかは、金額を聞いてから決められます
- 介護保険で断られた用事から話して構いません
→ 先に出すお金を10分の1にする払い方/理由書は誰が書くのか/工事のあとに気づいたとき/20万円は何回に分けられるか/借りている家で工事するとき/借りるか買うかを選ぶ/保険で頼めないこと一覧
確認に使った一次情報
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修の概要」(介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会 第1回 参考資料2)https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001501983.pdf
- 厚生労働省 老企第42号「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」法令等データベース
- 公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)とは
- 横浜市「介護保険の住宅改修費について」横浜市 住宅改修費
- 江東区「介護保険住宅改修費の支給」江東区 住宅改修費の支給
- 墨田区「住宅改修費受領委任払い(事業者登録)」墨田区 受領委任払い
- 板橋区「介護保険住宅改修費等受領委任払い」板橋区 受領委任払い
- 町田市「住宅改修の事前申請」町田市 事前申請
- 北区「福祉用具購入費・住宅改修費の代理受領方式」北区 代理受領方式
よくある疑問
選択制の対象を、自分で調べる方法はありますか。
借りていたものを、あとから買うことはできますか。
買ったあとに合わなくなりました。もう一度買えますか。
購入した場合、いったん全額を払いますか。
歩行車と歩行器の違いが分かりません。
ケアマネジャーが選択制の話をしてくれません。
介護保険で頼めないことの記事一覧
- 介護保険で頼めない24選
- 通院の付き添いを頼む
- 遠距離介護の負担を減らす
- 退院直後の在宅介護
- 訪問理美容
- 高齢者の配食サービスは安否確認とセット
- 緊急通報システム
- 介護保険の訪問介護を使い切ってからの家事援助
- 住宅改修は介護保険の外にも給付
- 社会福祉法人の負担軽減
- ケアプランは自分で作れる
- 養護老人ホームの措置入所
- 要介護の区分変更申請
- 特別障害者手当
- おむつと日常生活用具
- 障害者控除対象者認定書
- 高額介護サービス費
- 受領委任払い
- 家族介護慰労金
- 障害福祉の負担上限月額
- 高額医療・高額介護合算療養費
- 重度障害者医療費助成
- 自動車税の減免
- 住宅改修が必要な理由書
- 住宅改修の事前申請
- 住宅改修20万円の枠
- 借家の住宅改修と承諾書
- 見積もりと業者の選び方
- 申請の期限(2年)
- 福祉用具購入費の受領委任払い
- 高額療養費の受領委任払い
- 介護保険の住所地特例
- 介護保険の適用除外施設
- 認定調査で見られること
- 主治医意見書は誰が取るか
- 認定までの30日と暫定プラン
- 有効期間と更新
- 納得できないときの2つの道
- 限度額を超えたとき
- 種類ごとの上限
- 施設の食費・居住費を下げる
- 負担割合証の見方
- 保険料を滞納したとき
- 保険者と引っ越し
- 2年で消える権利
本ページは介護保険の住宅改修についての一般的な整理です。申請の様式・期限・受領委任払いの有無は市区町村ごとに異なります。実際の手続きは、担当のケアマネジャーと、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。
一次情報の確認先
このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。